ウポポイマガジン

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ウポポイ民族共生象徴空間

© アイヌ民族文化財団

28.

アイヌ文化にマナブ

EXILE ÜSAさん、ダンスを通して 「心の奥底の温かいもの」に触れたい。 アイヌの舞踊に惹かれる理由とは?

「何も考えず、踊りたい」。ダンサー、子どもたちのダンスの先生として知られるEXILE ÜSAさん。アイヌ民族の音楽や舞踊に感じた思いとは? 子どもたちの “ダンスの先生”として親しまれる一方、世界中のダンスを探し求めて旅を続けるEXILE ÜSAさん。そんなÜSAさんが、日本列島北部周辺の先住民族アイヌの歴史や文化を体感できる施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」を訪問。 アイヌの伝統舞踊や音楽を体験して、感じたこととは? ダンスを通した世界中の人々との交流から、アイヌ文化の魅力まで──。独自の感性で、語ってくれました。

EXILE ÜSAさん。適切な社会的距離をとり、感染対策をおこなった上で、撮影中のみ特別にマスクを外していますPhoto 榎本大樹

ウポポイ(民族共生象徴空間)

アイヌ文化の復興・創造のための拠点として2020年に北海道白老町にオープンした。「国立アイヌ民族博物館」「国立民族共生公園」「慰霊施設」の3施設からなる。将来に向けて先住民族の尊厳を尊重し、多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築くことを目指している。画像出典:(公財)アイヌ民族文化財団

「このまま撃たれるかもしれない」命の危機を救ったダンス

日本、世界各地のダンスを探求する「DANCE EARTH(ダンス・アース)」をライフワークとされてきました。そのきっかけは?

「踊りさえあれば、日本や世界の人々とつながれるのではないか?」そんな思いを「自分の体で証明したい」と感じたことがきっかけです。踊りがない民族や国は、世界中探しても、きっとないでしょう。

全く知らない人同士でも、一つの踊りを踊り合うことによって、心の距離が縮まる。そんな体験に、僕自身が何度も衝撃を受けてきました。

特に衝撃的な経験は?

たとえば、アフリカで狩猟採集をしながら暮らしているハッザ族に会いに行ったとき。最初に相手が弓矢を持って近づいてきたので、「このまま撃たれるかもしれない」という緊張感がありました。

Photo 榎本大樹

でも、「とりあえず踊ってみよう」と思って。踊った瞬間に、「こいつは悪い奴じゃないな」と伝わって、話すことができたんですよ。日本だと、初対面の人を前にして急に踊り始めたら、だいぶ怪しい奴だと思われるでしょうけど(笑)。とても面白い経験でした。

歌や踊りで伝承することの難しさ、大切さ

ダンスに命を救われた、とも言えますね(笑)。今日は、俳優・エッセイストの本上まなみさんとアイヌの伝統舞踊を体験されました(*)。いかがでしたか?

ÜSAさん、本上さんは「イヨマンテ リㇺセ(熊の霊送りの踊り)」を体験。熊の魂を天上の神々の国へ送り返す際に、皆で歌いながら輪になって踊られてきたPhoto 榎本大樹

手拍子と、踊りの動きと、掛け声と、歌──。皆で輪になって、全てが合わさったときに、すごくつながりを感じて高揚しました。本上さんとは初対面でしたが、踊りを通じて仲間になれた気がします。僕とは違ったモノの見方に、刺激も受けました。

アイヌの皆さんは、大切にしている思いを「歌や踊り」で伝承されていますよね。「文字で伝えること」が主流になっている現代では、それは難しいこと。そして素晴らしいことだなと。

白銀の世界で刀をぶつけ合った経験

ÜSAさんは、これまでもアイヌ文化を学ばれていますね。その魅力やご経験を教えてください。

僕が魅力に感じているのは、アイヌの人々が自然とともに暮らし、自然からインスピレーションを受けている点ですね。衣服や生活道具の一つ一つがアート。文様やフォルムなど、とにかく独特で格好いいなと。

国立アイヌ民族博物館で伝統衣服の展示に見入るÜSAさん。「洋服でもなんでも、パッと手に入る便利な時代。けれども、思いを込めて、時間をかけてつくったものに出会うと、心を動かされます。改めて、一つ一つのものに愛をこめて使っていきたいな、という気持ちになりました」Photo 榎本大樹

2013年、日本全国のお祭りを巡る旅をしていたときには、北海道・阿寒湖でアイヌの人々と「エムㇱ リㇺセ(剣の舞)」を踊らせていただきました。技術的にはそれほど難しくなかったのですが、一つ一つの間や独特なリズムの取り方には、苦戦しました。

普段の僕たちのダンスは、どんどん展開して、いろいろな動きをしていくんです。でも、剣の舞は同じ動きを続けるので、足や膝の筋肉にトレーニングのような疲れが残って。

ウポポイ訪問時は、久しぶりに「エムㇱ リㇺセ(剣の舞)」も披露。すぐに勘を取り戻し、皆を驚かせたPhoto 榎本大樹

本番では、氷の上で「エムㇱ リㇺセ(剣の舞)」を踊ったんです。あたりは雪が少しちらついていて、真っ白。その中で松明を焚いて、すごく神聖な気持ちになりました。刀がぶつかり合うときも、厄除けのように悪いものがとれていく感じがして。貴重な経験でした。

「何も考えず即興で踊りたい」伝統楽器の不思議な魅力

ムックリという伝統楽器(口琴の一種)も体験されました。40年のベテランの先生の演奏にも聴き入っていらっしゃいましたね。

40年のベテラン奏者、高橋志保子さんが、ムックリ演奏を披露Photo 榎本大樹

すぐに不思議な世界にひき込まれ、自然への感謝を込めながら「即興で踊ってみたい」という気分になりましたね。大地と空をつないでいる自分の体を思いきり使って、何も考えずに踊りたいです。

ムックリ演奏を体験するÜSAさんPhoto 榎本大樹

ムックリの演奏体験では、奇跡的に音が出ました(笑)。口のかたちを変えて音色を変えることにもチャレンジでき、とにかく嬉しかったです。皆さんもウポポイを訪れたら、ぜひ挑戦してみてほしいです。

違いを認め合い「心の奥底の温かいもの」に触れる

スマホ一つで多くのことを調べられる時代。実際にウポポイを訪れ、アイヌ文化に触れることには、どんな意味がありますか?

確かに、今は映像や写真等も簡単に見ることができますよね。でも、目の前で触れて、五感をフルに使うことは、全く別物です。

たとえば、舞踊では、音楽や掛け声がダイレクトに体にぶつかる。すると、全身の細胞に染み渡るような、自分の体の一部になったような気分になって、パワーが湧いてきます。

「イヨマンテ リㇺセ(熊の霊送りの踊り)」を踊るÜSAさん、本上さん、舞踊チーム。ÜSAさんは「アイヌ文化は、次世代までずっと伝えていきたい大切な文化だと思います。子どもたちと自然の中でキャンプをしながら、今日の踊りを一緒にできたら」と今後への思いを教えてくれたPhoto 榎本大樹

そういう経験は、普段の“脳みその記憶”とは違って、体に残ると思います。これから、子どもたちが生きていく力にもなるのではないでしょうか。

僕は踊りを軸にして日本や世界各国を見てきましたが、やはり、地域や民族などによって、リズムも踊りも全く違うんです。

ただ、「皆違うけれど、皆同じ」という感覚もあって。それぞれの格好よさと、それぞれの思いをリスペクトして、もっと交流していく。そうすれば、違いを認め合いながら、皆に共通している「心の奥底の温かいもの」に触れることができると思います。

東京ドーム2個相当の広大な面積を誇るウポポイ。アイヌの歴史や文化に関わる展示品を見ることができるのはもちろん、伝統芸能の上演、楽器演奏、刺繍、調理など、様々な体験プログラムが用意されている。ÜSAさんは「湖の周りにとても近代的な建物があって、1日いても飽きないくらいたくさんの見どころがある」と語ってくれたPhoto 榎本大樹

北海道・白老町の「ウポポイ」では、アイヌの伝統工芸品などを見られるだけでなく、音楽や刺繍などを実際に体験することができます(*2)。「自然を敬い、自然と共に暮らす」。そんなアイヌの人々の想いや独自の文化を、ぜひ現地で感じてみてください。

ウポポイ(民族共生象徴空間)

開園時間及び閉園日はこちら
住所:北海道白老郡白老町若草町2丁目3
公式サイトはこちら

(撮影:榎本大樹、スタイリング:Yamato Kikuchi (Rising Sun)、衣装協力: ENGINEERED GARMENTS、取材・文:磯村かおり)

*「踊りの体験」は現在、コロナ禍のため実施していません。
*2 体験プログラムは、季節や新型コロナウイルスの感染状況によって変わります。詳しくは、公式サイトをご覧ください。

sponsor 記事:ハフポスト日本版より転載 写真:榎本大樹

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